東日本大震災の発生により明らかとなった、被災ペットをめぐる問題や課題を受け、マース ジャパン リミテッド、メリアル・ジャパン株式会社の協賛により2011年10月からスタートしたこのセミナーは、災害時に迅速な動物救護活動ができる優秀なボランティアを、平時より養成することを目的にしており、今回が6回目の開催となる。
「被災地に学ぶシェルターメディスン(※)」をテーマに実施された今回は、地元仙台市や宮城県の自治体職員や獣医師、動物看護師、民間のボランティアスタッフなど58人が参加し、専門家による講義や、参加者によるディスカッションが行われた。
講師として登壇した田中亜紀氏(カリフォルニア大学デービス校)は、「譲渡を促進する科学」と題し、具体的な数字を用いてシェルター施設の収容能力の考え方と、譲渡のための猫の評価基準を解説すると同時に、譲渡促進のための工夫についてアメリカの事例を交えながら紹介。
また、水越美奈氏(日本獣医生命科学大学)は、譲渡前の動物の行動評価や譲渡後のフォローアップ、シェルターで動物と人が関わる時間や環境の充実が譲渡を促進するために重要であるという観点から、シェルター内での飼育環境改善のポイントや、大学で実践している事例などを、動物行動学の視点から紹介した。
続いて行われたグループディスカッションでは、震災後にボランティアを行ってきたスタッフや、ボランティアを受け入れていた行政機関職員の経験談が共有されるとともに、お互いのニーズのマッチングや、ボランティアの業務および責任範囲の明確化の重要性、行政に代わってボランティアスタッフに担って欲しい業務などについて意見が交わされ、ボランティアをする側、受け入れる側の双方の視点から討議された。
なお、第7回アニマルシェルターセミナーは、本年12月に日本獣医生命科学大学(東京都)で開催される予定だ。
※シェルターメディスンとは
動物保護施設に特化した獣医療や伴侶動物の群管理を意味し、その群の健康を維持しながら、心身ともに健康な動物を一頭でも多く譲渡することを目指した活動を指す。
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