さいたま市に住む全盲の男性は、9歳のラブラドールリトリバーの盲導犬オスカーと電車で通勤している。7月28日、いつものように職場に到着したところ、同僚からオスカーの腰部分から出血していると知らされた。診察した獣医師によると、フォークのような先が尖ったもので数カ所刺された痕があり、深いものは約2センチに達していたという。盲導犬は毛を散らさないために、外出など職務中は服を着用しているが、服に刺し傷がないところから、犯人はわざわざ服をまくり上げて刺したものと思われる。
男性はオスカーに異変があったことに気づかず、またオスカーも鳴き声を上げたり動揺したりする動作はなかったという。このオスカーの辛抱強さに対して、一部マスコミが「盲導犬は何があっても痛みを我慢して吠えない訓練を受けている」といった表現で報道したことから、今度は「痛みを我慢させる訓練は虐待ではないか」という声が広がり、全日本盲導犬使用者の会などには怒りの電話がかかってくるようになったという。
これを受け、全日本盲導犬使用者の会や関西盲導犬協会などは、8月30日、それぞれホームページに、「盲導犬は悲鳴すら上げてはいけないといった訓練は行っていません」とし、「犬のもって生まれた素質と、吠えることを学ぶ機会を与えないように育てること」、そして「抑制されることにより声をあげないのではなく、人間を信頼しているからこそ声をあげないのです」といった声明を掲載し、理解を求めた。もし我々が街で盲導犬を見かけても、職務中であれば触らず声をかけず、そっと見守るだけにして、盲導犬がストレスなく職務を果たせる環境にいられるようにしたいものだ。
関連URL: 「全日本盲導犬使用者の会」HP 「関西盲導犬協会」のブログ