本作が9年ぶりの主演作となるイッセーさんは、劇中の自然な会話の秘訣について聞かれ「ほとんどリハーサルはしなかったんです。リハーサルしないとドキドキしますよね? でもそのドキドキ具合を監督さんは狙ってたみたいで、本番がそのまま作品になったというか。だから楽しさと緊張と、同時に演技してました」と明かした。
リハーサルなしのリアルな掛け合いは随所で発揮されたようで、染谷さんとイッセーさんが会話するシーンで、染谷さんが台本とは真逆のセリフをアドリブでぶつけ、イッセーさんを焦らせた話を暴露(当のご本人は常にドキドキしながら撮影していたとか)。
また、イッセーさん演じる主人公の森衣恭一が、愛猫ミイを探して車の下を覗き込んでいるところに北乃さん演じる松川真由美が声をかけるという、ふたりの初対面のシーンで、北乃さんは「まるで匍匐前進をしているみたいに地面に這いつくばっていて(その姿が)すごすぎて。お芝居では声をかけましたけど、普段だったら声をかけていないかも」とコメント。イッセーさんも「きいちゃんは本当に声をかけてくれるんだろうかとヒヤヒヤした」と苦笑した。
舞台挨拶の中盤、もうひとり(一匹)の主役である、三毛猫のドロップがスペシャルゲストとして登場した。動物撮影の場合、通常は複数で一匹の役を演じるところ、この作品ではたった一匹で全編演じきったという、名女優ぶりを見せたドロップ。舞台挨拶でも、カメラのフラッシュや歓声にまったく動じる様子を見せず、イッセーさんの腕のなかでのんびりくつろぐ姿はベテラン女優さながらで、染谷さんは思わず「この貫禄を見習いたいです」とコメント。
また、18匹の猫と暮らした経験を持つベテラン愛猫家の岸本さんは、「動物をテーマにした映画やドラマってどうしても好きになれないんです。撮影の都合に合わせて猫たちにストレスを与えることがあるんじゃないかと思ってしまうんですけど、今回の撮影は本当にドロップちゃんにまったくストレスがかかってないんです。自然に、下田の町で生活しているみたいな雰囲気を切り取ったような撮影方法だったので、そういうことも含めて、この作品は大好きです」と語った。
俳優陣が口をそろえて語る、本作の自然な空気感については、深川監督もその出来栄えにご満悦な様子で、「僕は好きな作品になりました。ゆったりとした時間が流れていて、ずっとこの映画のなかに身を置いていたいなと思う作品になったと思います」とアピールした。
映画『先生と迷い猫』は、ひとり暮らしの偏屈な元校長先生が、亡き妻がかわいがっていた三毛猫を探しに外へ出ていくことで、町の人と交流し、大切なことに気づいていく、そんな猫と町と夫婦の愛を描いた作品。埼玉県で起きた地域猫失踪事件を扱ったノンフィクション作『迷子のミーちゃん~地域猫と商店街再生のものがたり~』(木附千晶著/扶桑社刊)をベースに、オリジナルキャラクターやストーリーを加えて映画化された。10月10日(土)より、全国の劇場で大ヒット上映中。
関連URL: 『先生と迷い猫』 公式サイト