ペルーのアンデス山脈にあるコルディリエラ・アズール国立公園で、これまで発見されたことのない、のどに金色の羽根を持つハチドリが見つかった。
シカゴのフィールド博物館の鳥類学芸員であるジョン・ベイツ氏をはじめとする研究者たちは新種の鳥だと思い、この鳥のDNA分析を行った。
その結果、その鳥は「ヒノマルテリハチドリ」と「アカバネテリハチドリ」という近縁のハチドリ2種から生まれた雑種であることがわかった。両種のハチドリは、喉にはっきりとしたピンク色の羽毛を持つことで知られている。しかしピンクとピンクが混ざるとどうして金の羽毛になるのだろうか。
このハチドリは、遺伝子が2種が均等に分かれたわけではない。先祖の1羽はこの2種が混在していたようだが、後の世代はアカバネテリハチドリとペアを組んでいたようである。
「塩と水を混ぜれば何ができるかはなんとなくわかりますが、2つの複雑なレシピを混ぜると、もっと予測できない結果になるかもしれません。このハイブリッドは、2つの親種からの羽毛の2つの複雑なレシピの混合物です」と、研究メンバーであるフィールド博物館の上級研究員チャド・エリアソン氏は声明で述べている。
羽毛のベースカラーはメラニンなどの色素に由来するが、羽毛の細胞構造や光の反射の仕方によって、「構造色」というものが生まれる。ハチドリの羽毛が光の加減でさまざまな異なる色に輝くのは、この構造的な色によるものである。
研究チームは、電子顕微鏡を使って鳥の喉の羽を研究し、羽に跳ね返る光がどのように異なる色を作り出すかを測定した。
「虹色のマゼンタを作る方法は1つだけではありません。ヒノマルテリハチドリとアカバネテリハチドリの親種はそれぞれマゼンタを作るための独自の方法を持っています。この2つのレシピを混ぜ合わせたときに、このような驚くべき結果をもたらすことがあるのです」とエリアソン氏は言う。
研究者たちはこの発見から、いくつかの種が組み合わさること、つまり「ハイブリッド」であることが、金を含む虹色の羽色の発生に貢献していると示唆する。
ハチドリに見られる色の進化のスピードから計算して、1種だけの場合、ピンクからゴールドへの劇的な色の変化を達成するのには600万年から1000万年かかる。しかし、種が混ざることで色の進化スピードは劇的に速まる。
研究者たちは、この研究結果をきっかけにほかの研究者がハチドリのハイブリッド種の可能性に目を向けるようになることを望んでいる。
「遺伝子データのような新しいツールは、地理的・時間的にどのようにしてこうした現象が起こるのかという新しい理解を与えてくれます。この研究が行われたペルーで私たちが調べたい1つの疑問は、この複雑な山麓の風景が、時間とともにどのように進化してきたか、そしてその変化が鳥やほかの生物の多様化にどのような役割を果たしたかです」とベイツ氏は今後の展望を語っている。
ハチドリの喉の羽色の変化は、遺伝子はもちろんだが、鳥たちを取り巻く壮大な自然環境や時間の変化を反映しているのだろう。
関連URL: Newly discovered hummingbird looks like it’s wearing a golden collar