
戦争の爪痕の残るカンボジアではいまだに600万個以上の地雷が埋められており、多くの罪なき人が命や下半身を失っている。悲しいことに地雷源は学校近くに散在し、被害者は子どもが圧倒的に多い。
そんななか、地雷の探知に日々汗を流している毛むくじゃらのかわいい生き物がいる。タンザニア生まれの5歳半のアフリカオオフクロネズミ「ローニン」だ。
2021年以来、カンボジアのプレアビヒア州に住むローニンは、その非常に敏感な鼻を使って、109個の致命的な地雷と、数十年かけて地中に埋められた15個の不発弾を嗅ぎ分けてきた。それは同じ爆弾探知ネズミのマガワが打ち立てた記録を上回るもので、最近ギネス・ワールド・レコーズに認定された。
ローニンを訓練したのはベルギーを拠点とする非営利団体APOPOで、団体の訓練・研究責任者であるシンディ・ファストはこう語っている。「子どもの頃から学習能力が高く、とても勤勉でした。ローニンは私たちが飼っているネズミの中でも大きいほうで、食べ物が大好きなんです。彼は食べ物にとてもとても意欲的なんです」。
ローニンはアボカドとバナナのピューレをご褒美に、入念な訓練を受けた。それ以来、彼は毎朝日の出前に起床し、日焼けしやすい耳としっぽに日焼け止めをぬった後、出勤する。
すさまじい集中力で地雷探知業務に取り組むため、彼は12分しか仕事をせず、あとはネズミらしくゆっくりと休んで過ごすそうだ。「ローニンが寝るために、地下の巣穴を模した特注の土鍋を作っています。そこでよく、腹を上にして仰向けになり、ボーッとしているのを見かけます」とファスト氏は話す。
APOPOは現在、地雷探知用に118匹のネズミを訓練中または配備中で、さらに49匹がアフリカ数カ国の喀痰サンプルから結核を探知するために使用されている。オリンピックのプール20個分の面積に半滴の塩素の匂いを感知できる彼らの敏感な鼻は、埋められた爆薬に含まれる1兆分の1グラムのTNTを検出することができる。
さらに重要なことは、このグループのネズミは小型の猫ほどの大きさで、体重はおよそ4ポンド(約8キロ)だが、地雷の感圧トリガーを起爆させるほど重くはないということだ。「任務中にネズミが負傷したり死んだりしたことは一度もありません」とファスト氏は言う。
現在までに、ローニンは約19万4000平方メートル(テニスコート1000面分)の土地から地雷を除去しており、その勢いは衰える気配がない。4月4日(世界ネズミの日)にギネス記録を達成した後、ローニンはパーティには行かなかったがバナナをたらふく食べさせてもらったようだ。