殺処分される犬や猫、そして彼らを救おうとする人たちの姿を描いた前作に対し、今回はタイトルの通り、東日本大震災で被災した動物たちと、彼らを取りまく人々がテーマだ。宮城県出身の新進気鋭の映像作家、宍戸大裕氏が監督を、前作でメガホンを取った飯田基晴監督が今回はプロデューサーを務める。
震災直後から現在に至るまで、600日におよぶ取材映像をもとに、数名の被災者やボランティアの物語を組み合わせながら、本作は進む。
避難所内に連れて入れず、外につないでおいたために愛犬を津波に奪われてしまったご夫婦。ともに生き延びたものの、避難生活を送る上で愛犬と離れて暮らさざるを得ない女性。ひとくちに「被災」といっても、人により状況はさまざまだ。
また、今回は犬猫にとどまらず、福島第一原発の事故の影響で、警戒区域に取り残された家畜たちにもスポットを当てる。壮絶な環境に取り残され、ただ命が尽きるのを待つだけの状態のなか、静かに涙を流す牛の姿は、本作のなかでも特に強烈な印象を残すだろう。
正直、決して明るい内容の作品とは言えない。最後に何かしらの答えや結末が用意されているわけでもない。ただ、本作は、今なおそこに生き続けている命があるという事実と、そのことに突き動かされ、手をさしのべる人々がいるという、たったひとつ、未来につながる可能性のある希望のかたちを見せてくれる。
言いかえれば、人が途絶えれば、希望も消えるのだ。この映画から決して目をそむけることができない理由は、そこにある。今すぐ何かをできなくとも。ひとりでも多くの人が、本作を通して被災地の今を知ってくれることを願う。
なお、明日1日には東京・渋谷ユーロスペースで、宍戸監督、飯田プロデューサーによる初日舞台挨拶が行われる。上映1回目(11:50~)、2回目(14:00~)の上映後に実施される予定なので、興味のある方はぜひ。
映画『犬と猫と人間と2-動物たちの大震災』は2013年6月1日より、渋谷ユーロスペースほか、全国順次公開。
関連URL: 『犬と猫と人間と2-動物たちの大震災』 公式サイト