アメリカではペットのフリーズドライビジネスが年々拡大している。愛するペットが死んでしまった後、その亡き骸をフリーズドライにし、生きていた頃と同じような状態で自宅に保存することができる。
12年前からペットのフリーズドライに関わっているアンドレアは、自分自身がそんな仕事をするとはまったく想定していなかった。母親が結婚式に特化した花屋を営んでおり、「ブーケを思い出として保存したい」という客の依頼で、90年代にプリザーブドフラワーを手がけるようになった。それを機に母親は独学ではく製技術を学び、機械も買って花だけでなく動物のフリーズドライも手がけるようになった。その頃は注文のほとんどが七面鳥の頭だった。
その後母親が癌で亡くなり、事業を継ぐことになったアンドレア。博物館や大学に展示する動物のはく製をメインに行なっているが、ペットのフリーズドライの要望が年々増加しており、全米各地から依頼が来る。
ペットのフリーズドライの流れとしては、まず飼い主にはペットが亡くなって24時間以内にタオルで包んで冷凍庫に保存し、冷凍した状態で郵送または持ってきてもらう。そして飼い主が望むペットのポーズに合わせて体を調整する。内臓などはすべて取り除いてきれいにし、目は人口のガラス製の目に置き換えられ、痩せた部分には詰め物をする。その後約半年から1年かけて機械のなかで乾燥させてやっと完成する。
「いろんな職業、年齢、人生を送る人から依頼が来るけど、全員に共通しているのはペットを愛しているということ。
ただ、自分のペットがフリーズドライでどんな容姿になるかよりも、ペットをフリーズドライした自分を他者がどう見るかを気にする人が多いの。『おかしいと思う?』って聞かれたら、『私は自分がやってる仕事を人がどう思うかなんてまったく気にしない所まで来てしまったわ。だからあなたも同じように生きてほしい』って答えているわ。
いまの社会では死を話すことはタブーになっていて、死とうまく向き合えない人が増えている。私たちは悲しみや寂しさ、切望、死と向き合うためのツールを人々に与えるべきだと思っている。死や悲しみをより理解できれば、過度に怖れることもなくなるはず」とアンドレアは言う。
ペットをフリーズドライする理由やその正当性はさまざまな意見がある。
「生きていたときと同じ姿で家にいたら慰めになるし、気持ちが穏やかにしてくれるんだろう」とペットのフリーズドライ業者であるチャックは言う。
自身も猫を飼っているアンドレアは、顧客に対して個人的な見解を言わないようにしている。「私の猫が亡くなったらたぶんフリーズドライをするでしょうね。でもその姿を毎日見ていたら、もう生きていないという事実を嫌でも突きつけられて耐えられないかもしれない」と、葛藤する気持ちを打ち明けている。
「人々がペットをフリーズドライにする理由を語り出したら何日経っても終わらないわ。でもひとつ言うなら、彼らはペットを本当に愛していて、どうしても手放したくないんでしょうね」。
関連URL: People are freeze-drying their pets after they die: ‘They don’t want to let go’