犬の飼い主にとってとても身近なドッグフードが、ときに人々の健康をおびやかし、国際的な問題へと発展してしまうリスクがあることを知っているだろうか。
いま問題視されているのは、ペットの健康ブームで人気を高めている犬用のローフード。ローフードには生の肉や魚などが含まれ、犬の歯の健康によく、エネルギー値を高め、毛や肌をすこやかに保つ効果があると謳われている。しかし、獣医のなかには子供や高齢者が住む家庭や免疫システムに異常のある犬にとってはリスクが高いと警告する声も少なくない。
実際にポルトガルの研究機関がヨーロッパのスーパーマーケットで販売されている55種の犬用ローフードのサンプルを集めて分析した結果、サンプルの半数以上から人間の腸内で見つかる腸球菌が発見された。
この腸球菌は抗生物質では簡単に死なないため、ひとたび誰かが感染すると集団感染するリスクが高い。過去20年にアメリカでは抗生物質への耐性の強い腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌)の集団感染が起こっている。ほとんどは病院内で感染して広がったようだ。
毎年世界では70万人の人が抗生物質耐性菌による感染で亡くなっており、国連は2050年には1000万人に増えると予測している。
犬用ローフードの実験ではサンプルの半数から腸球菌が見つかっており、その4分の1は「リネゾリド」という最終手段として投与される最強の抗生物質を使っても死滅できない菌を持っていた。
犬のペットフードが致死性の高い感染を引き起こしかねないにも関わらず、その事実はいまだに見過ごされている。乾燥タイプのものでもサルモネラ菌などが検出されてリコールになっているケースが後をたたない。
ブームに振り回されず、愛犬に与えているペットフードが本当に安全なのかしっかりと確認することが大切だ。
関連URL: Raw dog food poses major international public health risk, says new research