ニューヨークで20年以上看護師をしているブレスナハンさんは、2020年に生まれた息子のパトリック君が幼児期になったとき、通常の発達の節目を迎えていないことに気づいた。
何かがおかしいと直感した彼女は多くの専門医に診てもらい、遺伝子検査を受けた結果、幼いパトリック君(当時2歳)はティモシー症候群と呼ばれる珍しい遺伝性疾患(染色体内にあるCACNA1Cの突然変異)を持つことがわかった。これまで世界で診断された人は100人に満たない。
生命を脅かすこの疾患は、子供の心臓、認知能力、神経系、免疫系、そして外見に影響を及ぼす可能性がある。初期症状としては、身体的特徴、不規則な心臓機能・発作、コミュニケーション障害、発達の遅れなどがあり、ブレスナハンさんの息子もこういった症状があった。
この症候群を治療する方法はないが、治療法によっては症状を抑制したり、予後を改善するのに役立つ。
「作業療法と言語療法に加えて、ほかの手を打たなければならない」と感じたブレスナハンさんは介助犬を家に迎え入れようと動き出した。
障害者の介助ができる犬は1500時間以上の訓練を受け、ドアの開閉、照明の点灯、物品の回収、歩行中や2階への昇降時に人を安定させるなどのスキルを身につける。
ブレスナハンさん一家は、友人や家族、地域の人の寄付によって介助犬を迎えるための費用2万5000ドルを集め、やっとゴールデンレトリバーの介助犬ヤミーを迎えることができた。
「2週間も経たないうちに、息子はやったことのない12の新しいことをするようになりました。本当に目を疑いました。パトリックは以前は歩くのが遅く、不器用に動いていたのに、ヤミーと一緒にいると、突然、歩いたり、走ったりして、動きがずっと簡単でスムーズになりました。それまで一度も挑戦したことのなかった階段の昇り降りまでするようになったんです」と喜びに満ちた顔で話すブレスナハンさん。
愛と安心感に包まれながら理学療法を受けているパトリック君は、ヤミーのおかげで「自分でできる」自信を高めている。2人は切っても切れない絆で結ばれており、ヤミーにとってもパトリック君はかけがえのない相棒だ。
現在4歳のパトリック君は、心臓疾患や発作の危険性はあるものの元気に過ごしている。心臓の電気的活動をモニタリングするため、毎年心電図検査を受けている。
発達は非常に遅れているとはいえ、「正しい方向に向かっている。彼はこの世で最も幸せな子供です 」とブレスナハンさんは言う。
ブレスナハンさんは、この障害を研究している専門家たちと連絡を取り合い、息子にとって最善な治療法や病気とのつきあい方を日々模索しながら前進している。
「もしあなたの子供がその年齢で期待される発達のマイルストーンに到達していないのなら、ためらわずに遺伝子検査受けてほしい。たかが1本の綿棒から得られる情報が、その子の人生を変えるのです」
パトリック君とヤミーをつなぎ、奇跡をもたらした母親の勇気と努力には頭が下がる思いだ。
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