ノースカロライナ州に住むアミーさんとケビンさん夫妻のファームに新しいヤギの赤ちゃんがやってきた。
しかしその子ヤギは「心臓転位症」というとても珍しい病気を抱えており、胸にあるはずの心臓が首に位置していた。心臓が首の皮のすぐ近くにあるので外から心臓が透けて見え、鼓動も聞こえるほどだった。
獣医による診察でその子ヤギには肋骨と胸板がなく、心臓は何からも保護されていない状態だとわかった。この複雑な臓器の位置構造が命にどれほど関わるかはまだ不明点が多いものの、今後重大な問題が起こる可能性が高く、長くは生きられないだろうと言われた。
それでも夫妻は可愛らしい子ヤギをミラクルと名付け、哺乳瓶でミルクを与えながら家で飼うことにした。夜は同じベッドに体を寄せ合って寝ている。
「ミラクルは本当に愛らしいの。朝起きるとアミーの首に顔をあずけて甘えたように寝ていて、私たちの犬とも仲良しなんだ。彼女の寿命はあと2日なのか2年なのかわからないけど、生きている限りはすべてをかけて愛してあげるよ」とケビンさんは言う。
そもそもミラクルが夫妻のもとへ来るまでのストーリーは奇跡に近い。夫妻は2020年2月に今の家に引っ越し、だれひとり知り合いがいない状態でのスタートだった。引っ越しから2週間後にコロナパンデミックの影響でアミーは仕事を失い、その後アミーの母が亡くなり、息子は緊急の脳手術を受けることになった。
普段は明るいアミーさんは急にどん底に突き落とされ、なんでもいいから幸せになれるものが欲しかった。そんな中でケビンさんがアミーさんを元気づけようと差し出したのは1匹のヤギの赤ちゃんだった。
夫妻はそのヤギをハッピーと名付けて飼い始め、1匹では寂しいからともう1匹飼ったが2匹ともオスだと喧嘩をするからメスも加えることになり、それからどんどん増えて今では10匹のヤギとにわとり、ぶた、うさぎがいる。
ヤギを通して近所の人たちとの交流が増え、地域にすぐに溶け込むことができたアミーさんとケビンさん。地域内でほかにヤギを飼っているファームとのネットワークもでき、そのファームと情報交換をしたりヤギをもらうことがあった。実はミラクルもそのファームで生まれ、アミーさん夫妻に飼わないかと声がかかったのだ。
体の障害ゆえにいつ死んでしまうかわからないミラクルだが、そのことを近所の人々に伝えると多くの人々がサポートし、温かい声をかけてくれるようになった。
意図しなかったヤギとの生活を最も楽しんでいるのはアミーさんかもしれない。「昔は彼女のクローゼットはパーティーの服でいっぱいで、シワ取りのボトックスやマニュキュア、ペディキュアにお金を注ぎ込んでいたけど、いまではヤギのうんちが爪に入ってても最高に幸せみたいだね」とケビンさんは笑う。
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