8月頭のある日、コネティカット州の静かな住宅街で動物の変な鳴き声が夜中響きわたっていた。
その声の正体は野生の母グマで、道路沿いの排水溝にはまった状態で助けを求めていた。どうやら近くの小川で水を飲んだあと、好奇心から排水溝のなかに入ったようだが、どうやら奥まで入り込み過ぎてはい上がれなくなってしまったようだ。

救護隊が駆けつけて覗き込むと、排水溝には母グマだけでなく2頭の子ぐまも入っていた。救急隊は穴に丸太とはしごを設置してクマたちが登って出られるようにしたが、警戒モード全開の母グマは怖がり、子ぐまを引き連れてさらに排水溝の奥へと逃走してしまった。
警察官と生物学者たちはあきらめず、クマたちが逃げていった場所の近くにある排水溝出口に丸太とはしごを移動した。母グマはまだ怖がっていたものの、そこから立ち去ろうとせず佇んでいる。生物学者らは体を伏せるようにして体を極力動かさず、じっと排水溝のなかのクマたちの様子を伺っていた。

このまま母グマが出てくる見込みがないと思った彼らは、ある違う作戦を実行することにした。生物学者の1人が子ぐまにそっくりの鳴き声を出してみたのだ。すると母グマはすぐさま反応し、排水溝のなかからひょっこり頭を出した。
子を心配する母の本能を使う方法は功を奏し、母グマははしごを使って外に出てきてくれた。母にうながされて1匹の子ぐまも出てきたが、もう1匹は出てこない。母グマはみずから排水溝に戻り、子ぐまをくわえて引っ張り出した。

地上に戻った3頭はケガなどはない様子で、足早に森へと走り去っていった。
救護隊チームはだれひとりクマに触れることなく、動物の習性をうまく利用して安全に救出することができた。写真家によって撮影された一部始終の写真はとてもドラマティックで、絵本に出てくるようなかわいらしい子グマたちの姿にもつい笑みがこぼれてしまう。

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